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佐野研二郎の東京オリンピックエンブレムのパクリデザイン問題への雑感

   

olympic

この問題をみてて、やはり思うことは「仕事へのプライド」の部分です。
実は少し同情できる部分もあるのですが、これが足りないから問題になった。

仕事上、デザインには関わることが多くありますが、デザインという作業は必ずしも芸術・アートではない。
そのデザインの用途や期限で、デザインという作業は商業的な業務になることも多々あります。

大きく分けると

・芸術・アート的なデザイン ・・・ オリジナルであることが前提で、そこにこれまでに無い独創性を盛り込み、何か心に響かせるもの

・商業用途のデザイン ・・・ 多くの消費者にウケることが目的で、マーケティング要素も強く、それをクリアした上でオリジナル要素が出せればベター。最悪どこかで見たようなものでもOK

となる気がします。どちらも目的は異なる。
「デザイナー」という職業は後者で、「芸術家」が前者かもしれない。

どちらも重要なのは「そのデザインが目的を果たせているか」どうか。

デザイナーは他デザインを参考にするのは当然であり、それは悪いことではない

この佐野研二郎という人も含めて、お金をもらって仕事としてデザインをしている多くの人は、恐らく後者の仕事を求められることが多いと思うのです。
その中でも独創性と芸術要素を盛り込みながら、期待されている消費者のウケをクリアできるデザイナーが、センスのあるデザイナーということかなと思ったりします。

で、デザイナーの場合は納期だったりで、芸術家ほどじっくり考える時間もなく、さらに他で消費者にウケたという実績の要素を取り入れる必要もあるため、どうしても他者のデザインを参考にすることは多々あること。
さらにデザインを依頼した側としては、多くの商業的なデザインの場合は、多少見たようなことがあるものでも、良いものであればOKというクライアントが多いわけです。

なので恐らく、どの業界も「デザインは他のデザインを参考にする」ということは日常的にあることだと思います。
そしてそれは、後述する礼儀をクリアしてれば、特に問題ではないと個人的には思う。

丸パクリしていると感じさせない努力

デザインって、他デザインを参考にするのが当然で、かつデザイン自体に具体的な著作権が発生しずらく、曖昧な要素が強い世界。
だからこそ大切な礼儀というものもあります。

その中でも大切なのは「パクっていると感じさせない努力」だと自分は感じる。
参考のデザインがあっても、そのニュアンスだけを拝借して、他とミックスさせて新しくデザインを作り出すとか、色々とやり方はあるはず。

佐野研二郎の東京オリンピックエンブレム以外のデザイン問題で、一番叩かれたのが「デザインに使われている素材が他者の著作権物」だった点です。

トートバックのパンが一般消費者の写真をそのまま切り取って使うだとか、看板が他デザイナーが作ったものをそのまま貼り付けるだとか、エンブレムが使われる空港の想定図で他者が記載しているコピーライトを消して使ったとか、ここらが論外なわけです。
気に入ったパンがあれば自社で似た構図になるよう撮影すればいいし、気に入った看板があれば似たテイストで作ればいい。
というかコピーライト消して写真使うってどういうことよ。
そんな少しの努力もせずに、膨大なデザイン料を請求し、結果的にクライアントに多大な迷惑をかけてしまっているという点が、本当にプロ意識が足りないと感じました。

結局この過去の仕事の数々の雑さが仇となって、国民からの信用を失墜されたのが、エンブレム取り下げにもなった大きな原因。

過去の数々の件がなければ、エンブレムはそのまま使えたと思います。
エンブレムもパクりは否めないけど。

というわけで今回の件は、この人の仕事の雑さと意識の低さが原因となった騒動なので、自業自得かと思います。

仕事に対する麻痺の怖さ

佐野研二郎という人は、なんだかんだで「やり手」だったのではないかなと思います。
仕事に対してコネもあると思いますが、そのコネをもらえるようになるまでは、きっと実績を積み重ねてきたのでしょう。

しかしその中で、企業として、仕事としてデザインの数をこなすという作業を繰り返していくうちに、効率なども当然考慮するようになり、それがエスカレートしてしまった。
もしかしたら業界内では実はそんなに珍しいことでもないのかもしれないが、その業界内の事情を外からみたら、こんなにもズレが生じてしまっていた。

良くも悪くも、商売というのは本当に大きく括ると「情報を売る」ということで、それは需要と供給で価値もガラっと変わってしまうもの。
日本人は嫌いな傾向にありますが、極論「ボッタクリでも消費者が納得してお金を払っている」という状態であれば、それは商売として成り立ってしまいます。
だからこそ、仕事は消費者に対して、価値に比例した内容で真摯で取り組まなければいけないなぁと思うわけですね。

これは想像ですが、佐野研二郎が10分で思いついたデザインで数十万取れたこともあるかもしれません。
「10分で数十万!?」と思うのは当然ですが、それは需要と供給の中で生まれた価値であって、商売ってそんなものです。
問題はその価値ではなく、その仕事の意識が価値と比例しているかどうか。個人的に価値と意識は比例しなければいけないと思う。

高い価値の仕事に対して、例えばそこで他に著作権があるものを丸パクリで使うとか、それは「バレなきゃ工数分丸儲け」という意識だし、その意識は価値と見比べると、やっぱりクライアントをバカにしてるとしか思えない。

そして、その意識を保つために必要な要素というのが、冒頭の「仕事へのプライド」じゃないのかなぁと思うわけです。

自分の職業も、原価はほぼ人件費だけで、パソコンひとつで制作をして対価をいただく仕事。
パソコンひとつといえども、そこにはノウハウだったり色んな物が含まれていて、その上で価値が成り立ってる。
とはいえ、理解の無いクライアントからは「ちゃちゃっと5分でできるでしょ」とかいわれ、軽く見られることも多々ある。
確かに5分で終わる仕事で1万以上かかることもあるけど、それは技術料だけじゃなくて、仕事への責任も含めた金額であると、胸を張っていえる仕事をしようと思ったりするものです。

日本人は、仕事・価値に対する意識は強い方だと思います。
そこらが要因で、既存製品の品質向上化も得意だし、サービスの質も外国人に対しても公平に高く、他国からよく褒められます。
個人的に日本人の仕事に対するそういう気質は好きだし、同じく好きな日本人は多いでしょう。
だからこそ、今回の件がここまで批難されてるのかなと。

あれだよね、正直エンブレムがパクりかどうかよりも、過去にこんな失礼な仕事をしてた人の作品を、国を代表してのエンブレムだと認めたくないって意見が相当多いと思います。

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